「この星は、」


開かないドアを打ちつけるように強く誰かが叩いた。
乾いた砂混じりの真昼の月に、すがりつくように血がにじんで、
そうして半透明のオパールのしずくが辺りに散った。
叫びは痛いぐらいに清らかだった。

また誰かが死んだんだ。

弔いのために明日、誰かが高台でくすんだ赤色の旗を振るか。
この痛みを、僕らは一体何世紀ぐらい忘れないでいることができるだろうか。
時の番人は変わらぬ眼差しで僕らと僕らの孫の、そしてその孫の時代も見つめ続けるだろう。
全ての痛みは『生きる』ためには、忘却してしまったほうが安心だ。
けれども忘れた方がいい痛みなんてこの世にあるのか。

僕は学習したいよ。

だっていつまでたっても薄い玻璃のような地表の上を、そろりそろりと歩く僕らだ。
踏み抜いてしまえばそこは暗闇。
落ちていったあの子は救われたのか。だあれもしらない。
そして僕らもいつかは落ちてゆく運命なのか。
耳を澄ませば玻璃の向こう側から、吸い込まれていった星々の、囁きが聞こえるのに。
その囁きを無視して、僕らはいったいどこへ向かうというのだ。



誰のものなの、救い主はどこなの、

あなたは笑っているの、泣いているの。

僕らは同じではないの?

愛し愛されることを求めているのではないの?







Anna ( 2015.3月 )

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