[ 村田エフェンディ滞土録 ] 梨木香歩 

Posted by Anna(旧:Noa) On 2012年12月1日土曜日 0 コメント

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

ムハンマドが通りで鸚鵡(おうむ)を拾った。市場へと下る途中の坂道で、下手から坂を上ってくるその鸚鵡と目が合い、思わず持っていた麻袋を被せてそのまま屋敷に持ち帰ったのだ。
だいぶ前に読み終わって、レビュー書こうと思っていたのですが、今の今になってしまいました。
うん、やっぱり梨木さんの小説はいいなぁ。笑
一時期、10代後半~20代前半のころ阿呆のごとく本を読み漁っていた時期があり、主に小説や詩篇のたぐいなのですが、量を読むことに躍起になって結局内容はまるきり覚えてないというものも多いのですが(笑)、その頃出会って今も読んでみたいという気にさせる作家さんの一人です。
本当に梨木さんの文体や物語の展開が今の私の肌になじむ…。笑
梨木さんの紡ぐファンタジーは、それは実体のないもやっとしたものではなく、何か真ん中のほうにしっかりとした真実を隠し持っている気がします。

はてさて、なにやら珍妙なタイトルのついたこの小説ですが、
滞土の「土」は土耳古(トルコ)のこと。
エフェンディとはトルコ語で「学士様」という意味の敬称らしいです。
内容を簡潔に説明すると『考古学を勉強する村田くんという一人の青年のトルコ滞在記』
になるのでありますが・・・。やはり梨木さんの紡ぐ物語なのだなあ、1899年という時代背景の中、村田くんを取り巻く様々な人々、宗教 神々。これらのものがかの地でファンタジックに交錯してゆくさまは淡々としながらも胸を熱くさせる。イスタンブールの景色や町並みの描写は、まるでその時代にその場所に立っていたと思わせます。
そして物語を彩るいきいきとした登場人物。
下宿先の大家の英国人ディケンズ夫人、同じように部屋を借りている、希臘人のディミィトリス、独逸人のオットー、下働きの回教徒のムハンマド。そして、ムハンマドのつかまえた鸚鵡(オウム)・・・etc。

梨木さんの作品にはどれも『死』というものが独特の形で扱われている気がします。
それは目に見えない世界に敬い寄り添って生きてきたわれわれ古き良き時代の日本人の本質のようなもの。
村田エフェンディ~とも繋がりのある梨木さんの「家守奇譚」ですが、こちらはさながら泉鏡花の世界。(鏡花ほど毒気はないけど)
木原敏江の「摩利と新吾」やヘッセの「デミアン」読んだ時の感じと似ている気がするのは私だけでしょうか。笑

 『およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない 』

『楽しむことを学べ』

言葉の一つ一つが珠玉です。
宗教とは、国とは、戦争とは、人間とは一体何なのか、 、
そのエッセンスがすべてここに隠されているような気がします。

おすすめです。


Noa

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